#1 Men I Trust 「Oncle Jazz」
今回のレビューは、カナダのアーティストMen I Trustの「Oncle Jazz」です。
直訳すれば「ジャズおじさん」という不思議なタイトルのこのアルバムは、2019年にリリースされたMen I Trustの3枚目のアルバムです。また、現在のボーカル・ギターであるエマが加入してからは、最初のフルアルバムとなります。
元々、Men I Trustは、高校の友人であるジェシー(ベース)とドラゴス(キーボード)の2人で結成し、2枚目のアルバム「Headroom」までは各曲にゲストボーカルを迎えるスタイルでした。その後、2016年にゲストボーカルで参加していたエマが正式に加入し、今の3人体制となりました。
Men I TrustのYouTubeでは、彼らの音楽制作現場をまとめた動画もあり、その内容はとても素敵なものとなっています(Men I Trustは全楽曲もYouTubeにアップしていますので是非ご覧ください)。
雪深いカナダ、ケベック州モントリオールで1階は生活スペース、2階が作業場の一軒家で暮らし、パートタイムで働きながら、レーベルに所属することなく音楽を制作する。自然豊かな環境の中、自分たちの作りたいものを作る生活...個人的にとても憧れます...!
さて、Oncle Jazzについてですが、24曲も収録されており、1時間超の大作となっています。エマ加入後にシングルカットされた曲も再収録されています。
個人的にMen I Trustの静謐なメロディは、初めて聴くのにすっと身体に馴染み、まるで自分の体温と同じ温かさを持っているように感じます。それなのに、不気味なフレーズも織り交ぜてくるのでクセになるのが特徴です。
1曲目の「Oncle Jazz」、短い楽曲ですがキュートでメロウなメロディが流れてきて期待したところに、2曲目の「Norton Commander」。不気味です。笑 ですが、この不気味でダークなメロディにもエマのウィスパーボイスがとても合います。
その中でも、特に自分のお気に入りは「Norton Commander」、「All Night」、「Pines」です(末尾に楽曲を添付します)。しばしばMen I Trustの説明で使われるドリームポップの要素が詰まっている3曲だと思います。何も考えずに、頭がぼやーっとなるような。
自分の体温に馴染み、かつ不気味なフレーズを何度も聞きたくなる。そういった楽曲が本当に多いアルバムです。日本のアーティストで言えばogre you assholeに似た雰囲気を感じます。
Men I Trustは、アルバムをアナログ媒体で聴くことを推奨しており、彼らのBandcampではCDだけでなくLP、カセットテープも販売されています。
そのLP、カセットテープも購入したのですが、LPは盤面が透明だったり、カセットテープは真っ白だったりと、モノとしての完成度がすごく高くて驚きます。
サブスクリプションサービスで音楽を聴くことが当たり前となっていますが、個人的には本当に好きなアルバムはフィジカルで所有すべきだと思っています。Men I Trustはフィジカルの完成度が高く、その考えを肯定してくれているようで嬉しくなります。
散文的に書いてきましたが、Men I Trustは楽曲だけでなく、ライフスタイル、フィジカルのデザイン等すべてが個人的なツボにはまり、今後もその情報を追いかけていくことでしょう。
それでは#1はこれで終わりです。
次回は、坂本慎太郎「幻とのつきあい方」をレビューします!